コルビジェの色彩マジック

「コルビュジエの色彩論」—白い建築家は本当に白が好きだったのか

公開日:2025年1月15日

「コルビュジエの色彩論」—白い建築家は本当に白が好きだったのか

「白の時代」という誤解

初期の代表作であるサヴォア邸などが真っ白な外観をしていることから、ル・コルビュジエはしばしば「白の建築家」と呼ばれます。確かに彼は「白」を、純粋さや論理性、そして近代を象徴する色として愛しました。しかし、彼が白一辺倒だったというのは大きな誤解です。彼にとっての白は、他の色を際立たせるためのキャンバスであり、実際には彼は極めて洗練された、画家としての色彩理論を持っていました。彼はかつて「純粋主義(ピュリスム)」という芸術運動を主導しており、そこでは形態の純粋さだけでなく、色が持つ感情的な力に強い関心を寄せていました。

伝説のカラーパレット「サルブラ」

彼は壁紙メーカーのサルブラ社のために、1931年と1959年の2回にわたり、「建築的ポリクロミー(多色主義)」と呼ばれるカラーパレットを作成しました。これは彼が自然界から厳選した、調和の取れた色のセットです。

1931年のパレット(43色):
空間を構築するための基本的な色。「空の青」「石のグレー」「土のアンバー」など、自然素材に近い、落ち着いたトーンが中心です。これらは背景として機能し、空間に広がりや安定感を与えます。

1959年のパレット(20色):
晩年の彼が選んだ、よりダイナミックで力強い色。「鮮やかな黄色」「深い赤」「黒」など、アクセントとして効果的な色が揃っています。これらは空間にリズムと活気を与え、住む人の感情をポジティブに刺激します。

これらの色は、「どの色を組み合わせても不協和音にならない」ように設計されているのが最大の特徴です。彼はこのパレットを、ピアノの鍵盤(キーボード)のように使えるツールとしてデザインしました。

色で空間の広さと感情を操作する

コルビジェの色彩術の真骨頂は、「色による空間操作」の心理学です。彼は色を単なる装飾ではなく、空間のボリュームを変えるための「機能的な要素」として扱いました。

空間を広げる「青」:
彼は部屋の壁の一部を青く塗ることを好みました。青は後退色であり、壁が遠くにあるように感じさせ、狭い部屋でも広がりを感じさせる効果があります。

存在を消す「茶・黒」:
柱や暖房器具など、目立たせたくない要素を暗い色や土色で塗ることで、視覚的に背景に溶け込ませる「カムフラージュ」のテクニックも多用しました。

光を増幅する「黄色」:
光の当たりにくい場所に鮮やかな黄色を使うことで、まるでそこから光が発せられているかのような錯覚を生み出しました。

ユニテ・ダビタシオンの鮮やかなバルコニー

マルセイユのユニテ・ダビタシオンを見れば、彼の色彩への情熱が一目瞭然です。コンクリートの打ち放しという無骨で重たい素材(ブルータリズム)に対し、各住戸のバルコニー側面には赤、青、黄色、緑といった原色がリズミカルに配置されています。

これにより、巨大なコンクリートの塊が持つ威圧感が和らげられ、楽しげで人間味のある表情が生まれています。太陽の動きによって影の落ち方が変わり、建物全体が巨大な抽象絵画のように刻一刻と表情を変えます。これは、彼が画家として培った構成(コンポジション)の能力を、そのまま建築の立面に応用した傑作と言えるでしょう。

現代インテリアへの応用術

コルビジェの色彩論は、現代の私たちの部屋作りにも大いに役立ちます。ポイントは「全面に色を使わない」ことです。日本の住宅は白い壁紙が一般的ですが、それを変える必要はありません。

1. アクセントウォール:
部屋の壁の一面だけ、あるいはドア一枚だけを、コルビジェ・パレットにあるような「少しスモーキーな中間色」や「深い原色」で塗ってみてください。

2. 家具(インテリア)での導入:
壁を塗るのが難しければ、ソファやクッション、ラグで色を取り入れましょう。彼が共同でデザインした家具「LC2」のクッション色のように、基本は黒や白でまとめつつ、一点だけ鮮やかな色を置くのがコツです。

色を恐れず、しかし計算して使うこと。それが、あなたの部屋を「住むための機械」から「感動する空間」へと変える魔法になります。

コルビジェ・グッズ商品

全てル・コルビュジエの作品をモチーフにした商品となっております。

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