ペサックの労働者住宅「フルジェ・シテ」の壮大な実験
フランスのボルドー郊外ペサックにある「フルジェ・シテ(ペサックの近代住宅群)」は、コルビジェが1924年から1926年にかけて設計した労働者向けの先駆的な新都市開発計画です。実業家アンリ・フルジェの資金援助のもと、標準化されたコンクリート住宅を大量供給する実験的プロジェクトとして開始されました。この計画は、ル・コルビュジエの安価で機能的な住宅供給理論の重要な実践例であり、後に世界遺産に登録され、コルビジェの名前を不動のものにしました。
色彩計画(ポリクロミー)の採用:壁面を消去し空間を広げる魔法
ペサックにおいて、コルビジェは「ポリクロミー(建築的色彩計画)」と呼ばれる独自の手法を本格的に導入しました。建物の壁面を茶色、青、グリーン、白などの異なる色彩で塗装しました。これにより、隣り合う壁の輪郭が視覚的に曖昧になり、密集して建つ住宅群の圧迫感が打ち消され、街全体が広く、明るく感じられるようになるという色彩による視覚効果を狙ったのです。コルビジェ流の空間マジックです。
ドミノシステムに基づく間取り:標準化と自由な空間構成
住宅は、コルビジェの提唱した「ドミノシステム」に基づき、RCの床と柱だけで構成されています。この構造により、間仕切りの壁を自由に配置できる間取りが実現しました。標準化されたパーツを用いながらも、異なる住戸プランを作り出し、安価でありながら各家庭のニーズに応じる柔軟な居住空間を構築することに成功し、コルビジェの工業化住宅論を体現しています。
住民による勝手な改築騒動と、建築家が学んだ最大の教訓
完成当初、あまりに斬新だったフラットルーフや大きな横長窓は、労働者たちに受け入れられず、多くの住人が伝統的な三角屋根に改築したり、窓を小さく塞いでしまったりする改築トラブルが起きました。この事件は、建築家の押し付けの美学と、住民の実際の生活習慣とのギャップを示す有名な事例となり、ル・コルビュジエに「人間が住みこなすこと」への深い教訓を与え、コルビジェの思想に大きな影響を残しました。
フルジェ・シテの見学ツアーとモダニズム復元の歴史
現在のペサックの住宅群は、建築史上の価値が再評価され、当時のコルビジェが設定したオリジナルの色彩やフラットルーフの間取りへと忠実に復元が進んでいます。ボルドーからトラムとバスで簡単にアクセスでき、復元されたモデルハウスを見学するガイドツアーも用意されています。コルビジェが色彩と規格化によって挑んだ、社会改革としてのモダニズム精神を現地で体感してください。コルビジェの色の世界が広がっています。
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