コルビジェが8年の歳月と情熱を注いで完成させた「直角の詩」とは?
コルビジェの建築的思想と芸術活動の集大成
ル・コルビュジエの「直角の詩(Le Poème de l'angle droit)」は、に完成された、彼の代表的な詩画集です。
「直角の詩」は、詩と絵画の融合を象徴する芸術性の高い詩画集であるだけでなく、建築家ル・コルビュジエの思想の集大成とも呼べる作品です。
彼の建築や都市計画の根底にある、「直線と曲線」「光と影」「自然と人工」といったテーマが、19の章から構成されるこの詩画集の中で、詩とリトグラフで美しく表現されています。
コルビジェは、建築、絵画、彫刻、そして詩といった多様な分野で活動しましたが、これらすべての活動は一つの思想、すなわち「秩序と調和」という彼の哲学に根差していました。
彼はこの詩画集を通じて、「直角」という建築的概念を軸に、人間と宇宙、創造と破壊、生命と死という普遍的テーマを探求し、表現しました。建築では制約されることの多い思想や感情を、詩と絵画という自由なメディアで開放し、宇宙や人間の本質に迫ろうとしたのです。
コルビュジエの世界観、人生観、芸術観が一体となって展開されるこの詩画集は、20世紀芸術における「総合芸術」の理念を見事に体現した稀有な成果といえます。
現代においても、コルビジェの「直角の詩」は、「概念の芸術作品」として非常に高い評価を受けています。
コルビジェの創造性の源泉と、彼の思考の深さを理解する上で重要な作品
詩画集「直角の詩」は、単なる芸術作品にとどまらず、ル・コルビュジエの思想そのものを深く理解するための重要な鍵となります。
この作品は、彼が提唱した「モデュロール」(人体寸法に基づいた黄金比のシステム)や、「太陽の光」、「空間の質」といった、建築における彼の主要な概念を視覚的・詩的に表現しています。
リトグラフの色彩や形状は、コルビジェの建築作品にしばしば見られる、幾何学的でありながらも有機的な美を反映しています。
「直角の詩」は、彼の創造プロセスを内側から見つめる窓であり、建築家としての彼の思考がいかにして詩的、かつ哲学的な世界観に結びついていたかを示しています。
建築家志望者や芸術愛好家にとって、コルビジェの創造性の源泉と、異なる分野を横断する彼の思考の深さを理解する上で、非常に重要な作品と言えるでしょう。
コルビュジエにとって遺言のような存在
「直角の詩」は、ル・コルビュジエにとって、彼の生涯にわたる思想と実践を総括する最終章とも言える作品であり、自己の哲学を再確認し、次世代に語り継ぐための遺言のような作品でした。
彼はこの作品を通じて、晩年に至ってもなお尽きることのない創造への情熱と、すべての芸術が根源的に結びついているという確信を表現しました。
特に、「直角の詩」というタイトルは、彼が長年にわたり追求した「秩序」と、生命の躍動を表現する「詩」という二つの要素の統合を象徴しています。
彼はこの詩画集を、自身の思想と芸術活動の集大成として位置づけ、自身が人生をかけて探求した「人間と宇宙の調和」というテーマを、最も純粋な形で表現しようと試みました。
彼の死後も、この作品は、その普遍的な美と深い哲学性によって、多くの人々に影響を与え続けています。
コルビュジエが描いた詩画集「直角の詩」を高精細印刷で再現
「ル・コルビュジエ―諸芸術の綜合 1930-1965」(パナソニック汐留美術館)において販売用としてル・コルビュジエの「直角の詩」をA4サイズの用紙に各1点ずつ再現しました。
本作品は、にル・コルビュジエにより制作された詩画集「直角の詩」から、全体の図版(19点)と構成図(2点)を抜粋し、高精彩なデジタル印刷技術で再現したものです。