ル・コルビュジエの「国立西洋美術館ポートフォリオ」とは何か?
建築家コルビジェの思想と魂を映し出す、20世紀建築史における最重要文献
「国立西洋美術館ポートフォリオ」は、ル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建築作品であり、後に世界遺産となる「国立西洋美術館」の設計ビジョンや図面、理念をまとめた貴重な設計資料です。
コルビュジエにとって、国立西洋美術館は、彼が長年温めてきた「無限成長美術館」のアイデアを実現させることになった、大変思い入れのあるプロジェクトでした。
「国立西洋美術館ポートフォリオ」は、コルビジェがその夢を叶えるために、日本の弟子である建築家、前川國男、坂倉準三、吉阪隆正らとの協働のためのコミュニケーションツールとして作成したもので、コルビュジエが自らの建築思想をどのように伝えたかったかが明確に示されています。
このポートフォリオの最大の価値は、それがコルビュジエ自身の肉声による「建築の解説書」である点にあります。このポートフォリオには、コルビュジエ自身の手によるスケッチや構想がそのまま残されており、それらの存在が、単なる建築の設計図を超え、コルビュジエが作品に込めた哲学、コンセプト、そして情熱を直に伝える唯一無二の資料としているのです。
建築を学ぶ方や、美術館建築に興味を持つ一般の方々にとっても、建物の奥にある理念や背景を深く理解する手がかりになります。
「国立西洋美術館ポートフォリオ」は、現在も国立西洋美術館に収蔵され、20世紀建築史における最重要文献として位置づけられています。
世界遺産に登録された重要な根拠として、このポートフォリオの存在が評価された
このポートフォリオは、単なる設計資料を超え、ル・コルビュジエが追求した「近代建築五原則」の集大成ともいえる存在です。ピロティ、屋上庭園、自由な平面と立面、水平連続窓、独立した構造フレームといった彼の基本理念が、日本という新たな文脈の中でどう具現化されたのかを明確に読み取ることができます。
さらに、にユネスコ世界遺産に登録された際の重要な根拠の一つとして、このポートフォリオの存在が評価されました。建築史、文化史、そして世界遺産という視点から見ても、その資料的価値は非常に高いといえるでしょう。
そして、このポートフォリオが持つ最大の魅力は、ル・コルビュジエの「建築は芸術である」という哲学を、図面と思想の両面から体感できる点にあります。単なる美術館設計ではなく、人間の動線や自然光の取り込み方、空間の流動性など、機能と美が融合したコルビュジエ建築の神髄が凝縮されています。
建物そのものがアートであり、その設計過程を辿るポートフォリオは、まるで一冊の芸術作品のように深い感動を与えてくれます。
建築図面だけでは読み取れない、空間の持つ雰囲気や光の演出、そして無限に成長する「無限成長美術館」という彼の独創的なアイデアが、具体的なドローイングやテキストによって視覚的に、そして思想的に解き明かされています。
このポートフォリオを通じて、私たちはコルビュジエの建築がなぜ世界遺産となるに値するのか、その核心に触れることができるのです。
「国立西洋美術館ポートフォリオ」を忠実に再現した復刻版
にパリのル・コルビュジエのアトリエから日本に届いた国立西洋美術館の基本構想についてのポートフォリオの復刻版です。
世界文化遺産となった上野の国立西洋美術館の設計についてル・コルビュジエが手書きで作成したスケッチブックの内容をEchelle-1合同会社が忠実に再現したものです。