ル・コルビュジエの有名な3つの建築物の設計図面をモチーフにして制作
「ル・コルビュジエ―諸芸術の綜合 1930-1965」(パナソニック汐留美術館)において販売用として、関連会社Echelle-1の保管する設計図面の画像データをもとに額絵として3種類の額絵を作成しました。
ロンシャンの礼拝堂と、その設計図について
「ロンシャンの礼拝堂(1950-55)」は、フランス東部ロンシャンにあるル・コルビュジエの最高傑作と言われている建築物で、2016年には「ル・コルビュジエの建築作品群」の一部としてユネスコ世界文化遺産に登録されました。
「ノートルダム・デュ・オー礼拝堂」が正式名称で、正面から見ると、厚みのある屋根が印象的で、外観からはまるで巨大な白い彫刻のように見えるのが特徴です。
ロンシャンの礼拝堂の最大の魅力は、その彫刻のようなユニークな造形と、光と影が織りなすドラマチックな演出にあります。
船のような曲線の屋根は、重厚なコンクリートで造形されながらも、軽やかさを感じさせます。この屋根を支える分厚い壁には、様々な形や大きさの開口部がランダムに配置されており、色ガラスを通して色とりどりの光が礼拝堂内に差し込み、幻想的な雰囲気を生み出し、まさに「光の建築」とも呼ぶべき神秘的な祈りの空間が広がります。
ステンドグラスの色彩が内部の壁に映し出されることで、静寂の中に美しい輝きが生まれ、訪れる人々に深い精神的体験をもたらします。コルビュジエは、この空間を「光の巧みな戯れ」と表現しました。
コルビュジエはこの建築において、従来の教会建築とは一線を画す自由な造形と、光と空間の演出によって新たな祈りの場を創出しました。「ロンシャンの礼拝堂」は、機能美だけでなく、自然との対話、精神性の表現、そして「人間の精神性を高める建築」として、今なお多くの建築家や芸術家に影響を与え続けています。
こちらの額絵で採用されている「ロンシャンの礼拝堂(1950-55)」の設計図面は、ロンシャンの礼拝堂の断面図であり、内部からの景色が分かる設計図です。
コルビュジエが「光の巧みな戯れ」と表現した、「色ガラスを通して色とりどりの光が、ロンシャンの礼拝堂の内部に差し込んだ様子」を設計段階でイメージしていたことが分かる大変貴重な資料です。
ユニテ・ダビタシオン マルセイユと、その設計図について
フランス、マルセイユにそびえ立つユニテ・ダビタシオン(正式名称:ユニテ・ダビタシオン マルセイユ)は、ル・コルビュジエが、戦後の住宅問題に対する解決策として提唱した巨大な集合住宅で、日本では「ユニテ」とも言われています。
「ユニテ・ダビタシオン」は、彼が長年温めてきた「垂直の庭園都市」という構想を具現化したもので、単なる住居ではなく、住む人々の生活を包括的に支える一つの独立した都市として設計されました。
この「ユニテ・ダビタシオン」は、2016年にユネスコの世界遺産「ル・コルビュジエの建築作品 ― 近代建築運動への顕著な貢献 ―」のひとつとして登録されました。
建物の外観は、コンクリート打ちっぱなしの重厚なデザインに、南フランスの光と潮風を表現するかのようなカラフルなバルコニーと彩色ガラスがリズミカルに並んでいて、無機質になりがちな集合住宅に、人間味と個性を鮮かに加えており、フランスでは「輝く都市」という名で親しまれています。
「ユニテ・ダビタシオン」は、単なる住居の集合体ではなく、「生活の共同体」を形成することを目指していました。建物の内部には、住人たちの生活を豊かにするための施設が設けられています。図書館、郵便局、ホテル、そして商店街までが建物内にあり、住民たちは建物から出ることなく日常生活の多くをまかなうことができました。
これは、コルビュジエが考える「輝く都市」の思想であり、住居、仕事、レジャー、交通といった機能が一体となった理想的な都市生活のあり方を提案したものです。ユニテ・ダビタシオンは、戦後の住宅建築に新たな可能性を提示し、近代都市の未来像を具現化した作品なのです。
こちらの額絵で採用されている「ユニテ・ダビタシオン」の設計図面は、「輝く都市」を彩る、コンクリート打ちっぱなしとカラフルなバルコニーの色合いが分かるダビタシオンの外壁の図面です。
サヴォア邸と、その設計図について
「サヴォア邸(1928-31)」は、ル・コルビュジエによって設計された住宅建築であり、20世紀を代表するモダニズム建築の象徴的存在です。フランス・パリ近郊のポワシーに位置し、その革新的なデザインと思想から「近代住宅の最高傑作の一つ」と高く評価されています。
「サヴォア邸」は、1964年、当時の文化大臣アンドレ・マルローによって「民間建築モニュメント」に指定され、フランスの歴史的遺産として保護が始まりました。さらに2016年には「ル・コルビュジエの建築作品」として世界文化遺産に登録され、現在でも国境を越えて世界中の建築家に影響を与え続けています。
この「サヴォア邸」の設計には、ル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」がすべて盛り込まれています。まず、建物を地面から持ち上げる「ピロティ(柱)」によって、建築が軽やかに浮かび上がり、周囲の自然との一体感が生まれます。次に、屋上には「屋上庭園」が設けられ、建物によって失われた地面の緑を屋上で再生するという思想が具現化されています。
また、「自由な平面」は、柱と床スラブによる独立した構造によって、間仕切りの配置に制限がなく、機能に応じた自由な空間構成を可能にしました。そして、「水平連続窓」は、壁に依存しない構造だからこそ実現できたデザインで、内部空間に豊かな自然光を取り込み、外の景色をパノラマのように楽しめる効果をもたらしています。さらに、「自由な立面」は、構造とは独立したファサードのデザインが可能であることを示し、建築の表現に新たな自由をもたらしました。
これら五原則を高い完成度で具現化したサヴォア邸は、単なる住宅の枠を超え、近代建築の理念を明確に示したマニフェスト的建築として位置づけられています。今日では、建築学生や専門家だけでなく、世界中のデザイン・アート愛好家にとっても訪れる価値のある場所となっており、その影響力は今なお色褪せることなく、まさに「住宅建築の聖典」とも呼ぶべき永遠の名作なのです。
こちらの額絵で採用されている「サヴォア邸」の設計図面は、向かって中央が「サヴォア邸」の1階の設計図、向かって左が2階の設計図、向かって右が3階の設計図となっています。